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拠点形成の目的

地球温暖化対策がまったなしの状況になっている中で、21世紀の最重要課題である地球規模の環境及び資源エネルギー問題の根本的解決をはかるためには、これまで以上にグローバルな視点から国際的な教育研究に取り組む必要があります。日本の先端科学技術、特に化学関連分野の教育研究水準は極めて高いものがありますが、欧米に比べて最も立ち後れているのが教育研究のグローバル化です。21世紀は国際化の時代であり、ますます厳しさを増す国際的な科学技術競争に打ち克つためには国際的連携を密にしたグローバル教育研究を強力に推進することが必要不可欠です。大阪大学化学系(工学研究科、理学研究科、基礎工学研究科)では21世紀COEにおいて、自然の生命の営みと調和した持続可能な社会の実現に向けて、エネルギー環境問題の解決につながる自然共生型化学の創成に総力をあげて取り組んできました。資源の乏しい日本の未来を切り拓く途は、この創成にかかっていると考えたからです。このCOEでは、大学院博士後期課程の学生が国際的な環境で活躍できるように、学生の海外派遣・受入れ(計50名)、学生主体の国際会議の開催(計9回)などを積極的に実施しました。一方、大阪大学大学院工学研究科では英語特別コースを設け、平成14年10月からこれまでの5年間で延べ33名の研究留学生と16名の私費留学生、計49名を大学院前期課程に受け入れ、英語による教育・研究指導を行ってきました。博士後期課程にもこれまでの3年間で17名の研究留学生と7名の私費留学生、計24名を受入れています。次のステップとしては、これまでの取り組みをさらに発展させて、いよいよ地球環境・資源エネルギー問題の根本的解決を本格的に目指す必要があります。むろん地球環境・資源エネルギー問題の最終解決は容易に達成できるものではありません。これは長期間にわたる国家戦略として本格的に取り組むべき課題です。そのためには、日本の未来を担う次の世代に確実に研究成果を引き継ぐことが肝要です。このような観点から、本グローバルCOEでは、21世紀の世界、特に資源の乏しい日本にとって最重要課題である地球環境・資源エネルギー問題の根本的解決を図る革新的な先端科学技術を創製し、かつその基本理念と成果を次世代に継承発展させるため、グローバルな視点から物質と生命との関わりを重視した地球環境化学に関する世界トップレベルの教育研究拠点を形成することを目的としています。

拠点形成計画の概要

自然共生化学の創成(21世紀COE)から「地球を救う」生命環境化学への展開

21世紀COEにおける自然共生化学の創成を基盤に、いよいよ地球環境・資源エネルギー問題の根本的解決を目指して「地球を救う科学技術」としての生命環境化学の革新的科学技術開発に本格的に取り組みます。以下に示す基礎から応用まで生物的アプローチも含めて5つの研究グループを設け、「生命環境化学サイバーフォーラム」(ネット会議)を通じ、互いに緊密に連携して本拠点の教育研究を推進します。

  1. エネルギー環境化学:人工光合成システムによる水からの水素製造プロセス、水素貯蔵システム、太陽電池などの石油代替エネルギー開発及び高効率エネルギー変換材料の研究開発を行います。
  2. 物質変換環境化学: CO2固定による人造石油の開発、環境調和型物質変換触媒プロセスの開発など、地球環境・資源エネルギー問題の根本的解決につながる基盤化学技術を創製します。
  3. 分子情報化学:分子の多様な結合様式と相互作用を利用して、分子内・分子間の情報・構造伝達制御法を開拓し、物質及びエネルギー変換プロセス開発における新しい設計指針を得ます。
  4. 生命分子化学:生命分子集合体の構造とそのネットワーク機能を解明し、地球環境・資源エネルギー問題の根本的解決に役立つ新しい概念や方法論を体系化します。また、生命維持に貢献する診断薬、医療材料及び環境負荷軽減型の高効率生体触媒の創製を図ります。
  5. 環境生物化学:生命のメカニズムを多様なアプローチで解析し、工学的な展開を通して、その成果を生物産業に結実させます。さらに地球環境・資源エネルギー問題の根本的解決に貢献できる新しいフロンティア産業バイオを創成します。

本グローバルCOEでは、生命環境化学について幅広い視野から国際的な場で存分に活躍できる人材育成を行います。そのため先端化学分野で顕著な業績をあげている外国人教授を招聘(外国におけるサバテイカルを利用)して、各化学専門分野の大学院教育におけるE-ラーニング体制を網羅的に整備します。日本だけでなく広く海外から物質と生命との関わりを重視した化学分野の博士研究員を積極的に雇用し、英語特別コースの留学生と共同で教育研究を行なうことができる体制をつくります。海外からの博士研究員および博士課程学生のリクルートには、大阪大学がこれまでに海外連携拠点として設置した、米国サンフランシスコ事務所、オランダグローニンゲン事務所およびタイバンコク事務所(北京、上海の中国科学院にもCOE事務所を設置予定)を最大限活用し、世界トップレベルの人材を集めます。また、教育研究体制のバイリンガル化および評価体制の国際化を強力に推進します。
地球環境・資源エネルギー問題の根本的解決を目指ざした、世界トップレベルの生命環境化学教育研究拠点を確立するために、各方面の皆様方の一層のご支援を心よりお願い申し上げます。