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グローバルCOEミッション報告2007.12.25


グローバルCOEプログラム代表 福住俊一
グローバルCOEプログラム国際化委員会委員長 真島和志
グローバルCOEプログラムCOEフェロー委員会委員長 茶谷直人

大阪大学化学系のグローバルCOEプログラム「生命環境化学グローバル教育研究拠点」では、資源の乏しい日本にとって最重要課題である地球環境・資源エネルギー問題の根本的解決を図る革新的な先端科学技術を創製し、かつその基本理念と成果を次世代に継承発展させるため、グローバルな視点から物質と生命との関わりを重視した地球環境化学に関する世界トップレベルの教育研究拠点を形成することを目的としている。その目的を達成するための重要な手段として本COEでは、大学院博士後期課程の学生が国際的な環境で活躍できるように、学生の海外派遣・受入れを積極的に推進している。そのさらなる活性化のために、今回、ヨーロッパにおける主要大学を回って、本COEプログラムの周知徹底をはかるとともに、大学間学術交流協定をまだ結んでいない主要大学と協定を結ぶことを目的とした。訪問者は、グローバルCOEプログラム代表:福住俊一、グローバルCOEプログラム国際化委員会委員長:真島和志、グローバルCOEプログラムCOEフェロー委員会委員長:茶谷直人の3名である。訪問先は、フランス3大学(Ecole Nationale Supèrieure de Chimie de Paris (ENSCP), Ecole Normale Supèrieure, Paris, University of Strasbourg, Strasbourg)とドイツ2大学(University of Nuernberg-Erlangen, Erlangen, Technische Universitat Munchen, Munich)である。以下に今回の訪問の成果を示す。

11月20日 (火)4:25 am、パリシャルルドゴール空港に到着した。フランスは折悪しく鉄道ストライキの最中で、ホテルにたどり着くのに難儀した。ホテルで3人が合流後、すぐ10 amから4 pmまでEcole Nationale Supèrieure de Chimie de Paris (ENSCP)において会食を挟んで、Alain Fuchs 教授(Head of ENSCP) 、Virginie Vidal教授(ENSPにおける国際交流の責任者)に大阪大学化学系のグローバルCOEプログラム「生命環境化学グローバル教育研究拠点」についてパワーポイントを用いて説明し、ENSCPと大阪大学との国際交流協定を結ぶための議論を行った。29名のPIがカバーする研究領域についても持参したパンフレットを用いて説明した。Fuchs 教授は我々のグローバルCOEプログラムにいたく感銘し、即座に原案に署名したいと言い出されるほどであった。大学間でさらに詳細を詰めて、大阪大学と国際交流協定を締結し、学生の派遣・受け入れを積極的に進めることで合意した。ENSCPの玄関にはCharles Friedelの銅像があるので、その前で記念撮影を行った(写真1)。

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写真1.Friedel像の前で(ENSP)

翌11月21日(水)には、Ecole Normale Supèrieure (ENS)においてChristian Amatore 教授(フランス科学技術政策大統領顧問、アカデミー会員)とLudovic Julliene 教授(学科長)に、ENSCPの場合と同様に大阪大学化学系のグローバルCOEプログラム「生命環境化学グローバル教育研究拠点」 について説明し、ENSと大阪大学との国際交流協定を結ぶための議論を行った(写真2)。Amatore教授とは長年の付き合いがあるので話はうまく進んだ。Amatore教授は我々のプログラムに大変興味を持ったようである。ただし、Amatore教授はいったんしゃべりだすと止まらない人なので、話に割り込んで説明するのには苦労した。ENSはフランスの超エリート校で、化学系では年間20人程度しか合格者はいない。化学だけでなく、数学、物理も抜群の成績であることが要求される。特に数学では数多くのフィールズ賞受賞者を輩出している。一般にフランス人は英語があまり得意ではないが、ENSは別である。この誇り高きフランスの超エリート校と交流を開始するめどが立ったことは大きな収穫であった。

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写真2.Amatore教授と(ENS)

11月22日(木)は朝にドイツ国境に近いストラスブールに移動した。本来ならパリからはTGVで移動するのが便利であるが、これもストライキで断念し、飛行機で行くことになった。オルリー空港へも行く手段がなくなっていたので、やむなくタクシーで移動した。ストラスブールにはJSPSのオフィスがある。ここで、到着後すぐストラスブール大学のPierre Braunstein教授、国際交流担当副学長のMireille Matt教授に、パワーポイントとパンフレットを用いて大阪大学化学系のグローバルCOEプログラム「生命環境化学グローバル教育研究拠点」 について説明した(写真3)。大阪大学とストラスブール大学とはすでに大学間学術交流協定がある。これを再度活性化することに合意し、フランス側も政府の招聘教授制度を活用して大阪大学化学系から招聘する枠を設けることにも合意した。また、大阪大学とストラスブール大学とのワークショップを来年に大阪で開催することも合意した。ちょうどJSPSのシンポジウムが翌日開催されることになっていたので、夕方日本領事公邸でそのレセプションに参加した。このシンポジウムには我々のグローバルCOEの国際会議委員会委員長の菊地和也教授も出席していた。阪大産研の野地博行教授も参加していた。途中で退席し、副学長らと晩餐を取りながらさらに話を進めた。

11月23日(金)には、ドイツのエルラーゲンに移動した。これもストライキのため電車は使えず、飛行機でパリシャルルドゴール空港に戻り、さらにニュールンベルグ空港に移動した。ニュールンベルグ空港にはDirk M. Guldi教授が出迎えてくれて、エルラーゲン大学に行った。車で30分ほどの距離である。

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写真3. ストラスブールのJSPSオフィスにて

午後には、国際交流担当の副学長に会い、我々のグローバルCOEプログラムについて詳細に説明することができた(写真4)。ちょうどドイツではグローバルCOEに対応する研究クラスタープログラムの採択が決定した所で、エルラーゲン大学の化学系も無事採択されていた。5年計画で1つのプログラムに40億円強が投入される。こちらは研究費が中心であるので、そのPIに選ばれるかどうかは死活問題になる。それもあってどうやってPIを選んだのかしつこく聞かれたのには閉口した。ここでも話は順調に進み、我々のグローバルCOEとクラスター計画と緊密に連携して行くことで合意した。エルラーゲン大学とは大阪大学工学部と学部間交流協定があるが、これを大学間交流協定に格上げすることにも合意した。夜はGuldi教授夫妻と会食し、さらに具体的な学生交換の詳細を詰めた。この前日はGuldi研のスタッフ、学生はGuldi教授宅で感謝祭のパーテイをやったそうである。外国では奥さんの役割も大変である。

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写真4.エルラーゲン大学にて

11月24日(土)は、午前中さらにGuldi教授と研究計画の打ち合わせを行った。午後には最後の訪問地ミュンヘンに移動した。ドイツもストライキの影響で電車の運行が不規則となっていた。しかし、予定していた電車の変更もGuldi教授がエルラーゲン駅まで送ってくれてやってくれたので大変助かった。ドイツでは概して皆英語がしゃべれるが、駅でややこしい話を英語でするのは難しい。夕方には無事ミュンヘン駅に着くことができた。

翌11月25日は日曜日。ドイツでは日曜日は法律で働くことが禁じられている。飲食店以外はどこも閉まっている。久々の休息である。ただし、エルラーゲン大学の副学長へ送ったメールの返事は日曜日に来ていた。ドイツでも大学だけは日曜日でも働いている人がいるようだ。ミュンヘン工科大学にはパンフレットを20部ホテル宛に送っておいた。これまでは持参したパンフレット50部を配布してきたが、持ち歩くのは重くて大変だったからである。夜にホテルのフロントで確認すると、受取人なしで受け取らなかったということである。宛先とホテルの予約名が別名だったからである。日本ではあり得ないことだが、さすがドイツというか、杓子定規もここに極まれりである。もちろん郵便局は日曜に働いていないので、月曜にならないと問い合わせもできない。月曜になって早朝から、駅の中央郵便局に雪の中を歩いて問い合わせに行った。しかし、小包の取り扱いは別の所ということで、また肩すかしである。どうなることかとやきもきしたが、最後はミュンヘン工科大学のコーデイネーターが車で小包が留置きになっている場所まで連れて行ってくれて間に合わせることができた。

ミュンヘン工科大学は、真島教授がフンボルトで留学した場所であり、予定はぎっしり詰まっていた。ここもグローバルCOEに対応する研究クラスタープログラムの採択が決定していた。Fritz Kürn教授、Johann Plank教授、Kai-Olaf Hinrichsen教授、Johannes Buchner教授と次々と面談した(写真5)。大阪大学とミュンヘン工科大学とはすでに大学間学術交流協定がある。ストラスブール大学と同じく、これを再度活性化すること、我々のグローバルCOEとミュンゲン工科大学のクラスター計画と緊密に連携して行くことで合意した。夕方には福住と茶谷が研究講演を行った。討論も活発であり、我々の研究に対する関心の高さが伺えた。ここでは学生向けにグローバルCOEの紹介も行ったが、講演後すぐにぜひ大阪大学に来たいという学生が出てきたほどで反響は大きかった。

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写真5.ミュンヘン工科大学にて(講演前に)

今回のCOEミッションは1週間で5カ所の大学を回る強行日程であったが、どこでも我々のグローバルCOEに対する高い関心と評価を得た。交流計画も具体的に進むめどが立ち、成功裡に終えることができた。今回のミッションの準備および後処理では事務局のメンバーに大変お世話になった。この場を借りて感謝したい。

(文責 福住)